武将ひげ

フランスはひげに寛容である。

道ですれ違う、スーツを着た人がひげを生やしているということがよくある。

女性にはわからないと思うが、体毛の薄くない男性ならば、日本では、みんな毎日ひげを剃るというしゃらくせえ真似をしなければならない。僕だって、あまり毛深い方ではないと思うがひげはある程度剃ったり整えたりしている(毛蟹ほど毛深くはない)。

それと違って、フランスでは無精ひげの人がたくさんいる。特に僕が通っている哲学科には多い気がする。体感で言えば、男性の7割がひげを蓄えている。ひげ天国である。そしてそれはとても似つかわしい。どうして西洋人がひげを生やすとあそこまで、と思うほど似合っているし、貫禄がある。

 

思えば、日本の時代劇にひげを生やした人はあまり出てこない。上座に立膝の、えらそうな武将くらいなものだ。貧相な庶民に似合うわけがない。

それに比べてひげの生えたフランス人の見事なことよ。それはまるでギリシャ時代の哲学者のようである。プラトンやアリストテレスもかくやといった顔立ち。

 

「ひげは哲学者を作らない」ということわざもあるが、やはり哲学者らしいひげというのはあるものだ、と毎日しげしげとひげを眺める日々だ。